Sweet dreams,Maria.

或る夜の話

「……ヨーくん、ヨーくん」

「……んー……?なんッスか?マリア。トイレッスか?」

「……あのね、怖い夢見たの」

「怖い夢?どんな?」

「マリアがね、たくさん居るの」

「……それのどこが怖い夢なんスか?」

「おんなじ顔したマリアがね、いっぱいいるの。みんな一緒だからね、誰もマリアがマリアだってわからないの」

「……そんなこと、無いっすよ。夢は夢ってやつ」

「おんなじなんだよ?顔も声も一緒なんだよ?」

「でも、少なくとも俺らは……俺も、グレッグさんも、マリアの事は間違わないッス。ちゃーんと、分かるッスよ」

「……ホントに?」

「ほんとッス」

「ホントに、ホント?」

「……そんなに聞かれると逆に断言しづらいんッスけど……でも、マリア」

「うん?」

「世の中には、何の根拠もなく信じていい事って、割とあるんスよ」

「こんきょ?」

「まあ、えーと、ムズカシイ事はわかんねぇッスけど、俺らはマリアの事、絶対間違えないッス。これは信じてもらっていいってことッス!」

「……うん……うんっ、わかった!」

「よっしゃ!そうとなればもう一回寝て、今度は良い夢見るッスよ、マリア!」

「うん!……あ、あのね、ヨーくん」

「なんッスか?」

「お手手、繋いで寝ても良い?」

「うーん……まだ怖い夢が心配ッスか?」

「……うん……ちょっとだけ……」

「しゃーないッスね、特別ッスよ!」

「……ありがと、ヨーくん」

「よしよし、それじゃ、ちゃーんと肩までお布団に入るッスー」

「はーい」

「それじゃ、おやすみ、マリア。良い夢見るッスよ」